ナビタスを動かした米陸軍の受賞、金額もマグナチップの名もない――それでもマグナチップ株は15%高
マグナチップ株は28日、通常の約9倍の出来高で14.9%高と急伸した。だが、この日の陸軍関連ニュースが配信されたのは大引け後だった。ナビタスが獲得したALATTISの受賞で、そこに金額もマグナチップの名前も記されていない。それでも、オーバーナイト速報は一文だけでマグナチップを受賞に折り込んだ。中身の使命は10kVデバイス向けの米国国内製造プロセスで、ライセンスを受けて製造する工場は韓国・亀尾(クミ)にある。
Vincent Jiang · 3 min read
当日付の発表が一つもない15%高
米マグナチップ・セミコンダクターは9月28日(月)、前週末の3.30ドルから14.9%高い3.79ドルで取引を終えた。出来高は約660万株で、前週金曜日の72万5000株のおよそ9倍だった1。この日はOpenAIが一部の最先端モデルの学習を一時停止したとの報道で半導体株が軒並み下落したが、マグナチップだけが逆走した1。月曜日の日付が付いた企業発表、提出書類、決算報告は一つもなく、急騰の原因は公には分かっていない1。
陸軍のニュースは大引け後に届いた
陸軍のニュースが流れたのは、米東部夏時間の午後4時15分。市場はすでに大引けしていた。米ナビタス・セミコンダクターがALATTISへの選定を発表したものだ。ALATTISは「Accelerated, Large-Area, 10 kV SiC IGBT」の略で、米陸軍研究研究所が支援する、10kVの炭化ケイ素(SiC)デバイスの設計・製造・試験と米国国内製造プロセスの検証を目的とするプログラムだ2。ナビタス株は時間外取引で上昇し、火曜日も上げ幅を広げた3。この動きをThe Inferenceは9月30日、「ナビタスを20%動かした陸軍の受賞、金額の記載なし」という記事で検証した。
リリースには受賞の金額が記されておらず23、マグナチップへの言及も一切ない2。両社を結ぶ唯一の文は、タイガー・ブローカーズが配信するオーバーナイト速報「US Overnight」にあった。そこでは、受賞が「最近の株式出資や、ミッションクリティカルな軍事システム向けのGeneSiC高電圧SiC技術のライセンス供与を含む、マグナチップとの協業の深化と併せて」訪れたと伝えていた4。
求めたのは米国内製造、亀尾とは逆方向
それでも、この見方は広がっている。マグナチップのStockTwitsでは、投稿量が「極めて多い」(extremely high)水準で、センチメントは「極めて強気」(extremely bullish)を示す。9月28日の投稿は「ワシントンはナビタスのエコシステムにおけるマグナチップの役割への同意を示唆した」と述べ、他の投稿は適正株価の下限を8ドル、週を通じては20ドル超えと提示した5。受賞の文面が裏付けるものは一つもない。
米陸軍はナビタスの「米国を足場とする強靭な製造エコシステム」を評価し、定格10kV以上のデバイスを対象に「新規の米国内製造プロセスを開発、実行、検証する」企業として選んだ26。ナビタス自身の商用ラインの上限は6.5kVだ2。マグナチップのライセンスが対象とするのは1200V、2300V、3300Vの部品で、韓国・亀尾の工場に移管し、認定を受ける予定である17。米陸軍が求めたのは米国製のチップだった。ところが、買いが向かった先は亀尾のクリーンルームだった。
開示で判明した買主はいずれも3.42ドル以下
最高経営責任者(CEO)のチェ・リー(Chae Lee)氏は7月1日に就任した1。同氏は9月23日に8万株を1株3.18ドル(計25万4400ドル)で買い増し、24日にも2万株を3.22ドル(計6万4400ドル)で取得。保有株数は38万8750株となった8。ナビタスの500万ドルは、SECに提出された契約に基づき1株3.42ドルで146万1988株を確保し、決済は9月24日の予定だった13。28日は安値3.66ドル、高値4.04ドルで推移した1。10月1日時点の株価は3.64ドルで、開示で判明した買主のいずれの買値も依然上回っている5。
開示で判明した買主はいずれも3.42ドル以下、月曜の終値はそのすべてを上回った
Data
| 1株当たり価格 | |
|---|---|
| CEO買増 9/23 | $3.18 |
| CEO買増 9/24 | $3.22 |
| ナビタス 9/24 | $3.42 |
| 月曜終値 9/28 | $3.79 |
| 月曜高値 9/28 | $4.04 |
増産の請求書は亀尾に残る
この株価に上乗せされたプレミアムが織り込んでいるのは、金額の示されていないプログラムと、亀尾では果たせない製造ミッションだ。第2四半期(4~6月)の売上高は4470万ドルと、市場コンセンサスの4650万ドルに届かず、アナリスト・コンセンサスの投資判断は「減持(Reduce)」となっている8。現金は2026年第1四半期に1億380万ドルから9460万ドルへ減った。加えて同社自身の計画では、2027年までに亀尾の設備更新へ1200万~1300万ドルの純支出を見込む。その行き先はライセンス契約で営む炭化ケイ素の生産ラインであり、自社の所有には決してならない7。
マグナチップ、現金は8四半期で4分の1減 売上高は5500万→4500万ドル
- 売上高
- 現金
Data
| 売上高 | 現金 | |
|---|---|---|
| 24年7~9月 | $55.43M | $121.1M |
| 24年10~12月 | $51.15M | $138.61M |
| 25年1~3月 | $44.72M | $132.65M |
| 25年4~6月 | $47.62M | $113.33M |
| 25年7~9月 | $45.95M | $108.01M |
| 25年10~12月 | $40.57M | $103.76M |
| 26年1~3月 | $46.21M | $94.55M |
| 26年4~6月 | $44.7M | $87.94M |
自腹で払う亀尾の請求書に比べれば、500万ドルの小切手は小さい
- Estimate
Data
| Value | Range | |
|---|---|---|
| CEO購入 9月23日 | $0.25M | — |
| CEO購入 9月24日 | $0.06M | — |
| ナビタス出資 | $5M | — |
| 亀尾設備投資計画(2027年まで) (estimate) | $12.5M | $12–13M |
何が決着をつけるのか
強気シナリオにも、それでも本物の金はある。CEOは提携先の出資価格を下回る水準で自社株を買い、その提携先は4億5000万ドルのデザインウィン(design win)受注残を抱えて生産能力を必要としている7。だが、いずれも米陸軍の金ではない。ALATTISにマグナチップの名を挙げた公表文書は、まだ一つもない2。
今後の焦点は3つ。プログラムの金額か参加企業リスト、ナビタスの出資の完了を裏付ける開示、そして11月2日発表予定の四半期決算15。米陸軍が数字を出さない限り、3.42ドルを超える水準のすべては、いまだ価格を明かしていない契約をめぐる推量にすぎない。
Deepdive
AI-generated from this story and its cited sources. Not investment advice.



