オープンAIの1兆2000億ドル評価ラウンド、資金はまずベンダーへ
オープンAIは2030年までに累計2780億ドルの赤字を予測しながら、企業価値1兆2000億ドル超での資金調達交渉を進めている。資金が燃える間に回収するのは計算資源(コンピュート)ベンダーとその貸し手だ。新たな資金を振り込む者が、3500億ドルの売上高が届くまでの数年を抱え込む。
Vincent Jiang · 3 min read
1兆2000億ドルの値付け、その前提は5年分の穴
米オープンAIは新たな資金調達交渉で、企業価値1兆2000億ドル超を求めている1。その資金が何を買うのか、同社自身の予測がいま数字を付けた。9月18日に報じられた社内プレゼンテーション資料によると、2026~30年はフリーキャッシュフロー(FCF)の赤字が累計2780億ドルに達する見通しだ234。内訳は計算資源・インフラに8560億ドル、その他支出に2620億ドルで、これを相殺する売上高は8400億ドルしか届かない23。
売上高は今年の360億ドルから2030年には3500億ドルへ、ほぼ10倍に伸びる必要がある23。3月に米アマゾン、米エヌビディア、SBGなどから企業価値8520億ドルの評価の下で調達した1220億ドルは、2028年までに底を尽く見通しだ53。
Data
| Value | |
|---|---|
| 計算資源・インフラ | $856B |
| 予想売上高 | $840B |
| その他支出 | $262B |
| キャッシュバーン(差引残) | $278B |
ベンダーは回収する側に立つ
キャッシュバーンの1ドルすべてに、名前の付いた支払先がある。米オラクルは2030年までにオープンAIのデータセンターを建設する3000億ドルの契約を握り、米コアウィーブは最大224億ドルのオープンAI向けクラウド契約を抱える6。エヌビディアはオープンAI本体に最大約1000億ドルの出資を条件付きで確約している7。クレジットファンドのソナ(Sona)は、176件・総額3兆6000億ドルに及ぶAI関連融資を洗い出し、うち約120件を「循環性が極めて高い」と指摘する。投資家、顧客、供給業者に同じ企業名が並ぶ構図だ7。
Data
| Value | |
|---|---|
| オラクルとの建設契約 | $300B |
| エンヴィディアの条件付き確約 | $100B |
| コアウィーブとのクラウド契約 | $22.4B |
計算資源の支払いは契約として確定しているが、売上高の見通しはあくまで予測にすぎない。ベンダーはデータセンターの建設が進むにつれて代金を回収する。調達ラウンドの買い手が回収できるのは、売上 haが実際に届いたときだけだ。1.2兆ドルを超えるカネを振り込む者が、その間の数年を賄うことになる。
支出が続く前提で値が付く債務
その支払いの裏側の資金調達には、すでにひずみが出ている。オラクルが借り受け、オープンAI向けに建設した米ニューメキシコ州のデータセンター「プロジェクト・ジュピター(Project Jupiter)」に関連する融資約180億ドルは、投資家への売却が難航したあと、額面1ドルにつき89~91セントで取引されている。S&Pグローバルは7月、オラクルの格付けを投機的格付け(ジャンク)の1段階上まで引き下げた8。オラクルの借入金は8月末時点で1253億ドル。契約ベースの受注残高は6640億ドルで、その多くはオープンAI分とされる7。
格付けB+、負債3560億ドルのコアウィーブ7は今週、増額した37億ドルの転換社債を利率2.875%で発行した。転換権のない通常の上級社債の金利は8.5~9.75%だ9。オープンAIに650億ドル近い出資を確約しているソフトバンクグループ(SBG)は、アーム株を担保とするマージンローンを250億ドルに拡大したばかりで、オープンAIへの出資持分を担保にさらに100億ドルを借り入れている10。
リスクは後から入るカネに降りかかる
市場はすでに「減速」を一度、予行演習している。減速観測が浮上すると、オラクル株は5営業日で13%、コアウィーブ株は15%下落した。今回の資金調達を伝える報道が出て、両株はようやく下げ止まった6。強気筋にも根拠はある。キャッシュバーンの見通しは5月時点の3050億ドルから改善しており2、予測市場ポリマーケット(Polymarket)の取引者は、12月までにAIブームが失速する確率を12%と見ている7。
サム・アルトマン氏は、安全性への懸念を理由に2026年中の株式上場を否定している。「この時期に上場するのは得策ではない」と述べた5。そのため、流入する資金は民間の私募資金に限られる。しかもその資金は、ベンダー各社の後ろ、支払い順位の最後尾に置かれる。次の節目はすぐに訪れる。コアウィーブの転換社債は9月22日に決済を迎え、オラクルの融資銀行はいまもジュピター関連のローンを抱えている98。仮に10倍増の道筋がずれ込んでも、契約の支払いは待ってくれない。
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