スペースXの80億ドル電波買収報道で鉄塔株が急騰、まだ存在しない賃貸契約を織り込む

スペースXが全米規模の800メガヘルツ帯の電波を約80億ドルで買い取るとの報道を受け、鉄塔株は急騰し、3大携帯電話会社からは計約450億ドルの時価総額が消えた。鉄塔株が織り込む「4番目のテナント」は、現時点で売買契約しか存在しない。前回の「第4のキャリア」をめぐる攻防は、いまもヒューストンの連邦破産法院で続いている。

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Vincent JiangVincent Jiang · 3 min read
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2023年11月、米カリフォルニア州ホーソーンのスペースX本社で、フィリピンのマルコス大統領を出迎える同社のグウィン・ショットウェル社長兼最高執行責任者(COO)
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スペースXのグウィン・ショットウェル社長兼最高執行責任者(COO)。2027年末のスターリンク・モバイル(Starlink Mobile)サービス開始目標が鉄塔株急騰の支えだ。写真は2023年11月、同社のホーソーン本社で

スペースX+1.40% — スペースX, up 1.40 percent todayは10月8日、グレイン・マネジメントから全米規模の800メガヘルツ帯の電波資産を買い取ることで合意した。10月9日の米国株式市場では、無線通信業界が真っ二つに分かれた。上場鉄塔3社が急騰する一方、3大携帯電話会社は急落し、午前の取引だけで時価総額を計約450億ドル減らした 12。アメリカン・タワー+8.71% — アメリカン・タワー, up 8.71 percent todayは6営業日続伸を締めくくる終値182.24ドルとなり、この間の時価総額は約99億ドル膨らんだ。だが、その続伸の頂点にいるのは、売買契約にしか署名していないテナントだ 3。

一つの取引、正反対の値動き:鉄塔保有3社は急騰、賃借する3大携帯は急落

-20%-10%0%10%20%クラウン・キャッスル15.6%契約なきテナントを材料に急騰アメリカン・タワー9.3%SBAコミュニケーションズ7.3%ベライゾン-8.8%AT&T-9.8%TモバイルUS-13.3%
Data
Value
クラウン・キャッスル15.6%
アメリカン・タワー9.3%
SBAコミュニケーションズ7.3%
ベライゾン-8.8%
AT&T-9.8%
TモバイルUS-13.3%
2026年10月9日の株価の動き(ニューヨーク市場の終値と日中値)。アメリカン・タワーの1日分の数値はTrefis調べで配当を含むトータルリターン。その他はYahoo Financeの終値と日中値1,2,3

80億ドルで買えたもの、買えなかったもの

買い取りの対象は最大14メガヘルツの上下ペアの低周波数帯で、壁を越えて屋内まで電波が届きやすい帯域だ 4。両社とも取引条件は開示していない。報じられている価格は現金で約80億ドルだが、あくまで報道ベースで、確認されたものではない 45。すでに完了している取引の目印は、2か月前のものだけだ。Tモバイルは8月11日、この同じ電波資産をグレイン・マネジメントに売却した。対価は現金29億ドルとグレイン側の600メガヘルツ帯の免許 16。今回の取引にはなおFCCの承認が必要で、米司法省による審査も今後控えている 47。

鍵を握るのは規制当局

FCCは10月6日、スペースXが1万5000基の衛星で構築する端末直結型(direct-to-device)システムを認可した。うち半分は2032年10月までに、残りは2035年までに打ち上げる条件だ 18。スペースXが約170億ドルを確約したエコースターの帯域は、エコースターとの取引の第2段階が完了するまで運用できない。第2段階の完了は2027年11月30日ごろとみられる 18。バーンスタインの8月31日付リポートは、スペースXが単独で米国の通信網を構築する場合のコストを500億〜1300億ドルと試算した上で、電波を買っても網の構築を約束したことにはならないと指摘していた。金曜日の株高が忘れていた注意である 59。

電波はまだ安い部分――バーンスタイン、米国単独網の構築コストを500億〜1300億ドルと試算

  • 支出額・推計コスト
  • Estimate
$0B$50B$100B$150B800メガヘルツ帯の買い取り(報道値)エコースターへの支出確約構築コスト(バーンスタイン・下限)構築コスト(バーンスタイン・上限)$17B$8B
Data
支出額・推計コスト
800メガヘルツ帯の買い取り(報道値)$8B
エコースターへの支出確約$17B
構築コスト(バーンスタイン・下限) (estimate)$50B
構築コスト(バーンスタイン・上限) (estimate)$130B
グレイン・マネジメントの800メガヘルツ帯資産に対するスペースXの現金支払額(報道値)と、エコースターの電波に確約した約170億ドル。比較するのは、スペースXが単独で米国の通信網を構築する場合のコストについてバーンスタインが8月31日に示した試算の下限と上限。数値は報道およびアナリストの推計によるもので、取引条件は開示されていない。1,4,5,8,9

前回の第4のキャリアは、いまも法廷の中

鉄塔株の投資家が全国規模の第4のキャリアを織り込むのは、今回が初めてではない。アメリカン・タワー、クラウン・キャッスル+15.61% — クラウン・キャッスル, up 15.61 percent today、SBA+7.43% — SBA, up 7.43 percent todayの3社は、ヒューストンで進むディッシュ・ワイヤレスの連邦倒産法第11章(チャプター11)手続きの中で、合計約76億ドルの賃貸債権を主張している。うちクラウン・キャッスル1社だけで35億ドル超に上る。訴訟は調停のため11月4日まで停止されている 91011。FCCはエコースターの電波をAT&TとスペースXへ売却することを承認した際、24億ドルのエスクロー(第三者預託)を設けた。ディッシュ・ワイヤレスは、エコースターに売却を強いられた以上、支払義務はないと主張する 11。スペースXがいま手にしているのは、ディッシュの通信網を支えてきたエコースターの中周波数帯と、ディッシュが持っていなかった低周波数帯だ 179。

強気シナリオと、その落とし穴

バーンスタインのマディソン・レザエイ氏は、スペースXがテナントに加われば鉄塔の経常収益が10〜15%増える可能性があると分析し、最大の恩恵者に米国専業のクラウン・キャッスルを挙げた 12。この買い取りを、彼女はシグナルとみる。スペースXは「モバイルが機能するには地上系の無線ネットワークが必要だという事実を、本当に認めている」 12。レザエイ氏は、網の自前構築よりもキャリアとの提携に至る可能性が高いとみる。一方、同じ買い取りを鉄塔を完全に迂回する手段と読む向きもある 412。スペースXが標的とする3大携帯電話会社は、クラウン・キャッスルのサイト賃貸収入の9割近くを生み出している。新テナントの恩恵も、解約リスクも、同じ鉄塔の上に載っている 2。

新テナントを載せる基盤――7四半期連続で前年同期比増収

$2.4B$2.5B$2.6B$2.7B$2.8B23年10〜12月期24年4〜6月期24年10〜12月期25年4〜6月期25年10〜12月期26年4〜6月期第3四半期決算は10月27日発表
Data
収益
23年7〜9月期$2.52B
23年10〜12月期$2.46B
24年1〜3月期$2.51B
24年4〜6月期$2.55B
24年7〜9月期$2.52B
24年10〜12月期$2.55B
25年1〜3月期$2.56B
25年4〜6月期$2.63B
25年7〜9月期$2.72B
25年10〜12月期$2.74B
26年1〜3月期$2.74B
26年4〜6月期$2.75B
アメリカン・タワーの会計四半期別の総収益(単位は10億ドル)。米証券取引委員会(SEC)への提出資料に基づく。前年同期比の伸びは7四半期連続でプラス。13,14

決めるのは日程

アメリカン・タワーは10月27日、米東部時間の午前7時に第3四半期決算を発表する。会社が掲げる通期見通しは、不動産収益が106億9500万~108億4500万ドル、1株当たりAFFO(調整後FFO)が11.00~11.17ドルだ 13。ヒューストンでの調停は11月4日まで続く 911。2027年11月30日ごろには、エコースターの免許移転によってスターリンク・モバイルの基盤となる周波数帯が解禁される。グウィン・ショットウェル氏はサービスを2027年末までに始め、3大携帯電話会社の顧客を「相当数」取り込むとみている 18。それまでの間、スペースXが署名を残しているのは売買契約だけだ 12。

Deepdive

AI-generated from this story and its cited sources. Not investment advice.

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