EU、オンセミのチェコ炭化ケイ素工場に4億5000万ユーロ助成 名目はEV、成長モデルはAI
欧州委員会は、電気自動車(EV)と充電スタンドへの貢献を根拠に、チェコ・ロズノフ・ポド・ラドホシュテムでオンセミが建設する炭化ケイ素(SiC)工場への4億5000万ユーロのチェコ政府助成金を承認した。一方、同社が9月に示した自社モデルでは、車載事業は年率約9%の伸びにとどまり、AIデータセンター事業は同50%で拡大する見通しだ。
Vincent Jiang · 3 min read
欧州委員会は2026年9月23日、オンセミがチェコ・ロズノフ・ポド・ラドホシュテムで建設する総額16億4000万ユーロの統合型SiC工場を対象に、4億5000万ユーロ(120億コルナ)のチェコ政府助成金を承認した。助成率は約27%で、2027年までに商用生産を開始する予定だ 1。同工場は結晶成長から完成品まで全工程を一貫して手掛け、EU域内では初の試みとなる。助成の条件には、現行の想定を上回る利益をチェコと分かち合うことや、供給危機の際にチェコ側の注文を優先することが盛り込まれた 1。
テレサ・リベラ欧州委員会副委員長はこのチップについて「電気自動車や充電スタンドといったグリーン技術に不可欠だ」と評価した 1。
その理屈を支えるはずの自動車市場は、2年間どん底にいた
SiCはEVのトラクションインバーター(駆動用インバーター)向け需要で2023年まで急拡大した。その後、EVの成長鈍化と在庫消化で失速した 2。業界全体のSiC売上高は2026年4~6月期に8億1260万ドルと前期比12.1%増となったものの、なお2023年7~9月期のピークには届かない。オンセミのSiC売上高(推計)も12.5%増の2億1570万ドルへ、ようやく持ち直したところだ 2。
決算報告ベースの売上高も同じ軌跡をたどった。2023年7~9月期に21億8000万ドルでピークを付け、2025年1~3月期に14億5000万ドルまで落ち込み、直近四半期は16億ドルまで戻した 3。
オンセミの売上高、23年ピーク比で約25%減のまま
Data
| オンセミ売上高 | |
|---|---|
| 23年7~9月期 | $2.18B |
| 23年10~12月期 | $2.02B |
| 24年1~3月期 | $1.86B |
| 24年4~6月期 | $1.74B |
| 24年7~9月期 | $1.76B |
| 24年10~12月期 | $1.72B |
| 25年1~3月期 | $1.45B |
| 25年4~6月期 | $1.47B |
| 25年7~9月期 | $1.55B |
| 25年10~12月期 | $1.53B |
| 26年1~3月期 | $1.51B |
| 26年4~6月期 | $1.6B |
オンセミのSiC売上高、25年は横ばいの後12.5%急増
Data
| オンセミSiC売上高(推計) | |
|---|---|
| 25年1~3月期 | $168M |
| 25年4~6月期 | — |
| 25年7~9月期 | $192M |
| 25年10~12月期 | $188.5M |
| 26年1~3月期 | $191.7M |
| 26年4~6月期 | $215.7M |
ドライバー側のメリットはさらに薄い。最新のパッケージ技術でインバーターの損失を15%減らせるが、効果は1万5000キロメートルの走行で年間約2.90ユーロにとどまる4。
オンセミ自身のモデル、車載は年9%・AI電源は年50%成長
オンセミは9月16日の投資家向け説明会で、AIデータセンターを自動車と並ぶ成長エンジンとして位置づけた2。ハッサン・エル=コーリー最高経営責任者(CEO)は「電力を増やすだけでは本当に足りない。より良い電力が必要だ」と述べた5。
そのモデルの中身はこうだ。AIデータセンター向け売上高は今年が5億ドル超、2027年に約10億ドル、2030年までに25億ドル超。成長率にすると最低でも年50%で、自動車向けは車両生産が横ばいの前提で年約9%だ56。データセンターが高電圧直流(HVDC)に移行するにつれ、ラック1基あたりの製品搭載額は約1万5000ドルから11万5000ドル超へ高まる。810億ドルの市場拡大のうち450億ドルをAIが占めるとみている5。
オンセミのモデル、AIデータセンター売上高を30年までに5倍へ
- AIデータセンター売上高(目標)
- Estimate
Data
| AIデータセンター売上高(目標) | |
|---|---|
| 26年 (estimate) | $0.5B |
| 27年 (estimate) | $1B |
| 30年 (estimate) | $2.5B |
目標を嫌気して株価は約9%下落し、エッジAI企業シナプティクスの買収合意を機に始まった下げに拍車をかけた26。説明会の後には、ウォール街のアナリストが相次いで目標株価を引き下げた6。
AIの賭けが当たれば、補助金は無駄にならない
高電圧直流のラックにもSiCや窒化ガリウム(GaN)が必要となる。ジェフリーズはこの商機をインフィニオンとオンセミが二分するとみる7。欧州委員会は、公的支援がなければオンセミは欧州で工場を建設しないと結論づけた。ただし、その判断のよりどころは同社自身が示した反実仮想だ1。
支援がない場合に何が起きるか。その結末はすでに隣国で記録に残っている。インテルは2022年、1棟あたり170億ユーロのファブ(半導体工場)2棟の建設地にドイツのマクデブルクを選んだ。だが2025年の事業再編で、ドイツでの計画に加えポーランドの工場計画も取りやめた8。EUの半導体支援ではこれまでに計128億ユーロの承認が出ており、オンセミへの助成は8件目となる1。
答え合わせは2027年
ロズノフの新工場が商用出荷を始めるのも、自社モデルでAIデータセンターの売上高が倍増するのも、同じ年になる予定だ15。ドライバーがこのSiCで節約する2.90ユーロは確かに本物だ。ただ、4億5000万ユーロが買おうとしているのは別の何かである。
Deepdive
AI-generated from this story and its cited sources. Not investment advice.



