パロアルト・ネットワークス、自社CEOが出資していた新興企業を5億ドルで買収

買収されたConsoleは調達額計2900万ドル、非上場の直近評価額は1億5700万ドル。買収額を取引関係者は現金・株式合わせて5億ドルとみる。買収の発表は34%増収とGAAP(米国会計基準)で2億8200万ドルの最終赤字が同居する決算と重なり、11月の第1四半期(Q1)決算が、買収で得たエージェントが割高な評価倍率を守れるかを決める。

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Vincent JiangVincent Jiang · 3 min read
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TechCrunch Disrupt 2015のステージで講演するニケーシュ・アローラ氏
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TechCrunch Disrupt 2015に登壇したアローラ氏。パロアルト・ネットワークスは氏の指揮の下、2026年だけで7件の買収を完了している

Consoleがパロアルト・ネットワークスに買収されたのは、創業からわずか2年だった。2024年にアンドレイ・セルバン氏が創業したAIネイティブのヘルプデスク(問い合わせ対応)新興企業で、スライブ・キャピタル(Thrive Capital)が主導した620万ドルのシードラウンドと、DSTグローバルとスライブが共同主導した2300万ドルのシリーズAで計2900万ドルを調達。ピッチブック(PitchBook)が記録する直近の非上場評価額は1億5700万ドルだった1。

パロアルト・ネットワークスが買収を発表したのは9月1日。価格は明らかにしなかった。取引を知る2人によれば、価格は現金と株式で計5億ドルで、Consoleの調達額全体の約17倍に当たる1。評価額の跳ね上がりは、そのまま出資側のリターンでもあった。計2900万ドルを出した出資者にはSVエンジェルやAbstract Venturesのほか、エンジェル投資家として参加したアローラ氏本人がおり、2年足らずで約5億ドルを手にすることになった1。

エージェント層、作らずに買う

Consoleのエージェントは、パスワードの再設定やフィグマ、ミロといったアプリへのアクセス権の付与、トラブル対応を、人が直接介在せずにこなす。顧客にはRamp、Flock Safety、Scale AIが名を連ねた1。パロアルト・ネットワークスはこの層を「Cortex」に取り込み、アナリストが自然言語でアラートを処理できるようにする。アローラ氏の言う「ソフトウェア・アズ・ア・エージェント(Software as an Agent)」への転換であり、これでプラットフォームに「自律したセキュリティー成果を届ける手足」が備わるという2。ピッチブックの集計では、2026年に入って同社が完了させた買収はこれで7件目1。サイバーアークに250億ドル、Chronosphereに34億ドル近くを投じた大型2件に並ぶ買い物だ3。

サイバーアーク250億ドル、Chronosphere34億ドル、Console5億ドル、Koi4億ドル――エージェント買収はまだ『小銭』

  • Estimate
$0B$5B$10B$15B$20B$25Bサイバーアーク$25BChronosphere$3.4BConsole$0.5BKoi$0.4B
Data
Value
サイバーアーク$25B
Chronosphere$3.4B
Console (estimate)$0.5B
Koi$0.4B
買収額の発表値または報道値(単位は10億ドル)。サイバーアークとChronosphereはCNBC、KoiとConsoleはTechCrunch報道による。Consoleの価格は会社側が未公表(推計)。1,3

買収ラッシュと最終赤字、発表は同日

Console買収の発表は、決算発表と同じ日に行われた。2026年度第4四半期の売上高は34億1000万ドルと前年同期比34%増となり、調整後の1株当たり利益(EPS)は1.02ドルで、市場コンセンサスの0.98ドルを上回った。だがGAAPベースの純損益は2億8200万ドルの赤字に転落した。前年同期は2億5400万ドルの黒字だった 38。

こうしたテックイン(補完)買収の論理について、ディパク・ゴレチャ(Dipak Golechha)CFOは、SentinelOneの「Purple AI」やグーグルに対抗してCortex XSIAMのプレミアム(割高)な評価倍率を守ることだと説明する 4。だが2つの事実は、損益計算書の1つの科目でつながってしまう。Wall St Mavensが指摘するリスクは、市場がGAAP決算に注目するまさにその時に買収費用が利益率を圧迫する、というものだ。評価倍率を守るための買収が、赤字に転じたばかりの同じラインを通っていく 5。

売上高は30億ドル超へ加速、GAAP利益は赤字に転落

  • 売上高
  • GAAP純損益
-$1B$0B$1B$2B$3B$4B25年度1Q25年度2Q25年度3Q25年度4Q26年度1Q26年度2Q26年度3Q26年度4QGAAPが赤字に転落
Data
売上高GAAP純損益
25年度1Q$2.14B$0.35B
25年度2Q$2.26B$0.27B
25年度3Q$2.29B$0.26B
25年度4Q$2.54B$0.25B
26年度1Q$2.47B$0.33B
26年度2Q$2.59B$0.43B
26年度3Q$3B-$0.18B
26年度4Q$3.41B-$0.28B
四半期別の売上高とGAAP純損益(単位は10億ドル)。パロアルト・ネットワークスの2024年10月期から2026年7月期までの会計四半期(会計年度は7月31日締め)。出典:Sharadar(SEC提出書類ベース)、CNBC8,3

同じ株に2つの目標株価――351ドルと410ドル

モルガン・スタンレーは目標株価を394ドルから410ドルに引き上げ、トップピック(最推奨銘柄)に据え置いた。企業によるAI投資のうちセキュリティー分野に向かうのは約1.5%にとどまり、同市場は2028年までに3000億ドル規模になり得る、という見立てだ 6。一方、バーンスタインは9月17日、投資判断を「市場並み」(Market Perform)に引き下げた。ただし目標株価は351ドルに引き上げた。株価は6月中旬の約284ドルから場中高値約397ドルまで上昇していた 5。食い違うのは値段であって、事業の見方ではない。

単独で進む道もある。1億2700万ドルを調達し、評価額10億ドルとされるServalは、サービスナウ(ServiceNow)に取って代わる存在だと自らを売り込んでいる 71。

実験の答え合わせは11月の決算

パロアルト・ネットワークスは第1四半期の売上高見通しを33億~33億1000万ドルと示した。市場コンセンサス(32億2000万ドル)を上回る。あわせて2027年度の「次世代セキュリティー」ARR(年間経常収益)を110億8000万~111億8000万ドルと見通し、会社が掲げる2030年度200億ドルという目標に向かう 32。

同社は先週、Unit 42 Continuous Frontier AI Defenseを加えた。アンソロピック(Anthropic)の「Claude Mythos 5」とOpenAIの「GPT-5.6-Cyber」を基盤に構築した、常時稼働するエージェント型のテストサービスである 9。アローラ氏はサイバー分野のスタートアップのエコシステムを「さまざまなものを試す大きな実験室」と呼ぶ 3。年7件ペースで買収を重ねれば、実験室の使用料は損益計算書を流れていく。そして11月の決算こそが、その監査だ。

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