「従来型ストレージはAIに無理」と断じた創業者、そのネットアップに売却

ネットアップは3カ月で3件目となるスタートアップ買収で、英マンチェスターのPEAK:AIOを獲得し、中核ソフト「ONTAP」に組み込む。創業者が「レガシーベンダーにはできない」と述べたAI時代のアーキテクチャーを、まさにそのレガシーベンダー自身が買い取る構図だ。株主の支払いは既に済んでいる。株価はモルガン・スタンレーが直近で引き上げた目標の191ドルとアナリスト平均の192.50ドルを上回って終え、純資産倍率(PBR)は26倍に達した。

原文を読む

In this storyMSNTAP
Vincent JiangVincent Jiang · 3 min read
Share
米カリフォルニア州サニーベールにあるネットアップ本社。建物前の標識と、背後に立つガラス張りのオフィスビルに同社のロゴが見える
1 / 7Slide 1 of 7
米カリフォルニア州サニーベールのネットアップ本社。ストレージ大手の同社は、PEAK:AIOのAI向けファイルシステム技術をストレージOS「ONTAP」に組み込む。

「レガシーは無理」と断じ、レガシーに売却

マーク・クラジンスキー氏が英マンチェスターでPEAK:AIOを創業したとき、その前提は率直だった。「本物のAIプロジェクトが求める規模とコスト水準では、従来型ストレージがうまくいくことは決してない」1。2026年9月25日、ネットアップは、同氏のメタデータ管理と並列ファイルのアーキテクチャーを「ONTAP」に統合すると発表した。ONTAPは、30年を超えて企業向けストレージを売り続けてきた同社の中核をなすソフトだ3。ネットアップはIDCの四半期別エンタープライズストレージ市場調査で売上高3位につける2。買収価格は公表されていない2。

得をする側

規制当局が買収を認めれば、PEAK:AIOの2025年の資金調達ラウンドを支えたロンドン上場のベンチャーキャピタル・トラスト(VCT)、ペンブロークVCTは、テクノロジー投資で初のエグジットを計上する。クラジンスキー氏にとっても、創業者として3度目のエグジットだ1。リターンは「意義が大きい」と評されるのみで、当事者双方とも額には触れていない12。トラストの株主にとって勝ちは本物だが、大きさは計れない。これが、この取引のきれいな半分である。

既に払った側

もう半分は株価の話だ。ネットアップ(NTAP)の株価は2026年9月18日、終値197.79ドルだった4。モルガン・スタンレーの目標株価191ドルを上回り、アナリスト平均の192.50ドルも超えている5。191ドルへの引き上げは同行にとって今年2回目で、137ドルからの上方修正であり、格付けも「アンダーウェート」から「イコールウェート」へと切り替えた45。純資産倍率(PBR)で見ると25.9倍。業種平均の15.4倍を大きく上回る6。経営陣がAIの波に乗るために1ドルも使わないうちに、市場はすでにその代金をネットアップに請求していた。

その下には本物の決算が横たわる。売上高は30%増の20億3000万ドルで過去最高。オールフラッシュアレイの売上高は47%増の13億1000万ドルに達し、AIやデータレイク刷新に関わる案件は約350件あった76。それでも、営業キャッシュフローは25%減の5億300万ドルに落ち込み、フリーキャッシュフローも35%減だった7。

横ばいの先に過去最高――ネットアップの四半期売上高、2026年7月期までの8四半期

$1.4B$1.6B$1.8B$2B$2.2B24年7〜9月期24年10〜12月期25年1〜3月期25年4〜6月期25年7〜9月期25年10〜12月期26年1〜3月期26年4〜6月期この後、3カ月で3件目の買収
Data
純売上高
24年7〜9月期$1.66B
24年10〜12月期$1.64B
25年1〜3月期$1.73B
25年4〜6月期$1.56B
25年7〜9月期$1.71B
25年10〜12月期$1.71B
26年1〜3月期$1.95B
26年4〜6月期$2.03B
四半期別純売上高(単位:10億ドル)。ネットアップのSEC提出資料に基づくSharadarの四半期ファンダメンタルズデータ(2026年9月29日取得)。暦年基準の四半期で表示。ネットアップの2027会計年度第1四半期は2026年7月31日に終了した。11

AIネイティブ勢を追う3連続買収

答えを物語るのは買収ラッシュだ。7月にDataPelago、8月にJetStream Software、9月にPEAK:AIOと買収を重ね27、業績見通しも約6億5000万ドル引き上げて中央値81億ドルとした67。AIネイティブの競合であるDDNはエヌビディアと組み、GPU起点のデータアクセス(GPU-Initiated Data Access)で協業しており9、ネットアップ自身の最高技術責任者(CTO)も、PEAK:AIOが米ロスアラモス国立研究所と共同開発した並列NFSのメタデータサーバー「Lattice」をとりわけ高く評価している10。ネットアップが買っているのは、GPU時代の先駆者たちが一足先に世に出したアーキテクチャーだ。

もう一つの見方

ジョージ・キュリアン最高経営責任者(CEO)は「あらゆる指標で業績見通しを上回る、記録的な年の幕開けだ」と述べた7。決算説明会ではアナリストから、その過去最高の実績のどれだけが値上げを見込んだ顧客の駆け込み需要なのかと繰り返し問われた。当四半期は例年より1週間長く、製品粗利益率は150ベーシスポイント低下し、駆け込み需要の規模を、ネットアップは明かそうとしない8。買収発表そのものにも、製品化の約束はない3。

売上高が過去最高の四半期、キャッシュ創出は前四半期を下回る

  • 営業キャッシュフロー
  • フリーキャッシュフロー
$0B$0.5B$1B24年7〜9月期24年10〜12月期25年1〜3月期25年4〜6月期25年7〜9月期25年10〜12月期26年1〜3月期26年4〜6月期$0.5B売上高は過去最高、キャッシュは前年同期比25%減
Data
営業キャッシュフローフリーキャッシュフロー
24年7〜9月期$0.11B$0.06B
24年10〜12月期$0.39B$0.34B
25年1〜3月期$0.68B$0.64B
25年4〜6月期$0.67B$0.62B
25年7〜9月期$0.13B$0.08B
25年10〜12月期$0.32B$0.27B
26年1〜3月期$0.95B$0.9B
26年4〜6月期$0.5B$0.4B
四半期別の営業キャッシュフローとフリーキャッシュフロー(単位は10億ドル)。ネットアップのSEC提出資料に基づくSharadarの四半期ファンダメンタルズデータから作成、2026年9月29日取得。暦年基準の四半期で表示しており、ネットアップの2027会計年度第1四半期は2026年7月31日に終了した。11

成否を分ける数字

2027会計年度第2四半期の業績見通しは、売上高で20億2500万〜21億7500万ドル7。上限近くに着地すれば、需要は構造的なものとみえてくる。下振れすれば、過去最高の四半期の一部は、後の四半期からの前借りだったことになる8。

Deepdive

AI-generated from this story and its cited sources. Not investment advice.

Reader comments

0 comments

    Sign up

    Get your curated digest

    After email confirmation, you will receive a daily digest of the most relevant news that matter to your portfolio