ウーバー、“他人のAI”に100億ドル 社内のAIは切り捨て

米ウーバーは自動運転車の購入に75億ドル、出資に25億ドル超を充てる。同じ時期、元社員によれば同社は費用対効果が乏しいとしてAIサービス「Claude」の利用クレジットを削っていた。9月2日に解雇された3300人が、この帳簿のもう一つの行を占める。

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Vincent JiangVincent Jiang · 4 min read
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サンフランシスコの交差点を渡るウェイモのロボタクシー
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サンフランシスコの街なかを走るウェイモのロボタクシー。ウェイモは約20カ月で同市の配車市場の約4分の1を握った。ウーバーは同じ街に、今年中にルシッド製ロボタクシーを走らせると約束している。

5分の1に縮んだ仕事、そして解雇

解雇対象になったウーバーの従業員1人は、AIツールの導入で自分の仕事に要する時間が以前の5分の1に縮んだと話す1。同氏は9月2日に解雇された3300人の1人だ。全従業員の1割に当たり、コロナ禍以来で最大の人減らしとなる23。ベイエリアではこのうち390人の雇用が11月2日で終わる。253人はサンフランシスコ本社の職だ4。

100億ドルの大転換

その一方で、同じ会社はロボタクシーに約100億ドルを投じる計画を進める。自動運転車の購入に75億ドルを確約し、加えてルシッドやリヴィアンなどへの出資が25億ドル超に達する可能性がある5。「1台も車を所有したことのない会社が、今や70億ドル超の車両購入契約、自社の車両基地、ルシッドへの2桁の出資比率を抱えている」。元テスラ・ウェイモ幹部のスペンサー・ペン氏はそう指摘する5。

社外のAIに巨額、社内のAIは削減

社内では予算の流れが逆だった。元社員らによれば、ウーバーは2026年上半期、経営幹部が「予算を使っても見合う生産性の向上がない」と判断したのを受け、「Claude」などAIサービスの利用クレジットを打ち切るか縮小した1。9月の社内メモはAIに一切言及しなかった2。一方、7月に顧客対応職の1割を削った際にはAIが理由に挙げられていた23。

その1週間後、ダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は投資家向けの会合で、今回の組織再編は「生産性の面で、AIかどうかを問わず本当に追い風になっている」と述べ、「マネジャーよりも実行する人間をもっと増やしたい」と語った1。

ウーバーでいま資金を得るAIには車輪がつき、社内のAIはクレジットを削られた。

アセットライトな財務に突きつけられる車両の請求書

ウーバーの設備投資は2023年後半から今年6月まで、どの四半期も1億ドルに届かなかった6。車両購入の確約額だけでも、直近四半期の7000万ドルの100倍を超える6。この請求書を背負うのは、資産を持たないマーケットプレイス(仲介事業)を買ってきた株主だ。車両基地も、出資も、ロボタクシー隊も、いまや株主が支えることになる。

ウーバーの設備投資、3年連続で四半期1億ドル割れ

$0M$50M$100M23年10~12月24年4~6月24年10~12月25年4~6月25年10~12月26年4~6月四半期1億ドルには届かず7~9月期:3300人解雇、総額100億ドルと報道
Data
四半期別設備投資
23年7~9月$61M
23年10~12月$55M
24年1~3月$57M
24年4~6月$99M
24年7~9月$42M
24年10~12月$44M
25年1~3月$74M
25年4~6月$89M
25年7~9月$98M
25年10~12月$75M
26年1~3月$65M
26年4~6月$70M
四半期別設備投資(100万ドル単位)。ウーバーが米証券取引委員会(SEC)に提出した資料による(データはSharadar経由)。2023年第3四半期~2026年第2四半期6

車両隊への資金はハードウェアに連動する。前払いではなく、配備の節目(マイルストーン)達成に結び付けた支払いだ9。ルシッドへの発注はSUV「グラビティ(Gravity)」2万台で始まり、最低台数は3万5000台に引き上げられた。発注には出資が付随し、ウーバーは持ち株比率を11%超まで積み増した7。リヴィアンには2031年までに最大12億ドルが出されるが、支払いはやはりマイルストーン達成が条件。見返りはロボタクシー「R2」1万台に加え、2030年までにさらに4万台を発注する権利だ8。ルシッドのロボタクシーを走らせるソフトウエアを握るヌーロ(Nuro)には、約5億ドルが投じられている7。

リヴィアンは2025年に36億ドルの最終赤字を計上し、今年の納車台数は最大7万台と見込んでいる8。ウーバーの発注こそ、他のどの顧客も書き込まないロボタクシー需要の一行だ。

ウーバーの弁明:AIではなく組織の階層

同社の説明はアルゴリズムの話ではなく、組織の話だ。CEOから7階層以上離れた職位にいる社員を2割減らし、小さなチームはほぼ半減。浮いた資金は「成長とイノベーションに再投資」するという2。メモが唯一、行き先として名を挙げたのは「自動運転の未来」だ23。

コスロシャヒCEOは9月10日、ゴールドマン・サックス主催のカンファレンスで、浮いた資金を「価格引き下げと品揃えの改善」に充てると説明。人員削減は「優位な立場から」の決断だと述べた。同じ日、自己資金で約1000万ドルの自社株を買い入れたことを明かした10。4~6月期の売上高は12%増の142億ドルだった36。ウーバーは人員削減で浮いた資金をロボタクシー計画に充てるとは言っておらず、記録上それを示すものもない。

時計を決めるのはウーバーではない

ウェイモは約20カ月でサンフランシスコの配車市場の約4分の1を奪った。フェニックスでは提携をすでに解消し、2028年5月まで続く契約からも抜ける調整を進めている57。テスラのサイバーキャブ(Cybercab)は9月4日、オースティンで乗客の輸送を始めた5。ウーバーは今年中にベイエリアとロサンゼルスの路上でルシッド製ロボタクシーを走らせると約束し、2028年までに28都市への展開を目指す511。リヴィアン製ロボタクシーは2028年に続く8。

ウェイモは安全性に、テスラは価格に、ウーバーは供給力に賭ける。「そして、この時計を決められる会社はどこにもない」とペン氏は話す5。ルシッド車による初の乗客輸送こそ、100億ドルの行方を最も早く確かめられる試金石だ。年内にベイエリアかロサンゼルスで料金を払う乗客が車に乗っていなければ、この大転換の日程表も乗客とともに遅れていく。

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