米政府がリゲッティ株を取得、CEOは翌朝に自社株を売却

米商務省がリゲッティに交付するチップス法(米半導体支援法)ベースの1億ドル支援は、補助金ではなく株式交付のかたちをとる。約774万株が納税者側に渡り、当初分4390万ドル、残りは達成目標(マイルストーン)連動だ。株価が7.2%急伸する場で社内者が売却に動き、IBM傘下企業は受益3社すべての下支えとなるファウンドリ(受託製造)層を固めた。

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Vincent JiangVincent Jiang · 2 min read
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超伝導量子コンピューター「IBM Quantum System One」の黄金色のシャンデリア。クライオスタット(極低温容器)が開かれ、積み重なったプレートと配線が見える。
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写真は「IBM Quantum System One」。IBM傘下のアンダーロン(Anderon)はニューヨーク州オールバニで300mmウェハーの量子チップ向けファウンドリ(受託製造施設)を建設しており、米政府が新たに出資する3社はいずれもここでチップを製造する可能性がある。

調印の翌朝

リゲッティ・コンピューティングは2026年9月8日、米商務省とチップス法(米半導体支援法)に基づく1億ドルの協定に調印した1。同日の取引で株価は7.2%急伸した2。

その翌朝、最高経営責任者(CEO)のスボドゥ・クルカルニ氏は12万株を188万ドルで売却し、直接保有分は14万411株に減った2。最高財務責任者(CFO)のジェフリー・バーテルセン(Jeffrey Bertelsen)氏も、調印の数日前にあたる9月3日に37万5010ドルを手にしていた2。2人とも事前に、時価のごく一部の価格でストックオプションを行使しており、ごく標準的な報酬の仕組みによるものだ2。

補助金ではなく投資

株式交付が支援金の条件になっている。リゲッティは商務省に約774万株、1株あたり約12.92ドルで引き渡す。当初分4390万ドルが先行し、残りは達成目標(マイルストーン)に連動、未達成なら返還され得る3。同社自身のリリースは、この株式が「米国の納税者にとってのリターンを高める」ために存在すると説明している1。そのリターンは、スタート時点ですでに含み益を抱えている。発行価格の12.92ドルは9月23日終値の16.01ドルを下回る32。

ディーウェーブとクオンチニウムも同日、同じ株式交付条件付きの1億ドル取引を確定させた4。3社分の支援は、9社を対象とする総額20億1000万ドルのチップス法プログラムの下、5月に交わされた意向表明書(レター・オブ・インテント)がもとになっている38。

売上高2130万ドル、営業損失1億7450万ドル

リゲッティは4~6月期(第2四半期)は売上高514万ドル、営業損失2806万ドルを計上した5。直近8四半期の累計では、売上高2130万ドルに対して営業損失は1億7450万ドルに上る5。

リゲッティの8四半期:売上高2100万ドル、営業損失1億7500万ドル

  • 売上高
  • 営業損益
-$30M-$20M-$10M$0M$10M24年7~9月期24年10~12月期25年1~3月期25年4~6月期25年7~9月期25年10~12月期26年1~3月期26年4~6月期-$28.06M翌月、チップス法の支援協定に調印
Data
売上高営業損益
24年7~9月期$2.38M-$17.35M
24年10~12月期$2.27M-$18.49M
25年1~3月期$1.47M-$21.63M
25年4~6月期$1.8M-$19.88M
25年7~9月期$1.95M-$20.55M
25年10~12月期$1.87M-$22.6M
26年1~3月期$4.4M-$25.95M
26年4~6月期$5.14M-$28.06M
リゲッティのSEC提出書類(Sharadar集計)による四半期別の売上高と営業損益(単位:100万ドル、2024年7~9月期~2026年4~6月期)。2026年9月のチップス法支援はこの期間には含まれない。5

株価は過去1年で49%下げている。2025年11月につけた77ドル近辺の高値から16.01ドルまでの下落率は約79%に達する2。ウォール街の平均目標株価は28.81ドルと、この終値を80%上回る。投資判断は「買い」が8件、「中立」が4件、「売り」はゼロとなっている2。一方、投資調査会社ザックス(Zacks)は同じ銘柄に「強い売り」(Strong Sell)を付けている6。

土台を握るのはIBM

より大きな構図は、フルスタック各社の一つ下の層にある。IBM傘下のアンダーロンは9月16日、ニューヨーク州オールバニの300mm量子ウェハー専業ファウンドリを対象とする10億ドルの支援を最終合意した。ここにIBMが自己資金10億ドルを別途投じる。最初のウェハーはすでに流れている78。株式交付条件付き支援を受ける3社の一角、ディーウェーブもファウンドリの顧客として関心を示している9。ワシントンは3社のライバルそれぞれに少数出資する。その一方で、3社がチップを焼く土台の層は1社に集約されつつある。

ファウンドリ1社がフルスタック各社の10倍を獲得

$0M$200M$400M$600M$800M$1,000Mアンダーロン(IBM)ファウンドリ$1,000Mリゲッティ$100Mディーウェーブ$100Mクオンチニウム$100M
Data
Value
アンダーロン(IBM)ファウンドリ$1,000M
リゲッティ$100M
ディーウェーブ$100M
クオンチニウム$100M
2026年9月に最終決定したチップス法の支援額(単位:100万ドル)。フルスタック3社への支援には株式交付条件が付く。アンダーロンのファウンドリ支援には、IBM自己資金の10億ドルが合わせて投入される。3,4,7

先行きを左右するもの

4~6月期は売上高が前年同期比でほぼ3倍に増えた。B.ライリーが目標株価35ドルを掲げる根拠も、この成長トレンドだ56。初回分の4390万ドルは、リゲッティの現金残高2780万ドルを上回る35。ただし残りはマイルストーンの達成が受け取り条件となる。この契約に署名した経営陣が、政府が買ったばかりの自社株を今後も売り続けるのか。その行方を見極める手がかりとなる開示に注目したい。

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