AI投資ブーム、IBMから1日で680億ドルを消す――その理由を今度は弁護士が問う

IBMはメインフレーム「z17」をリアルタイムAI処理を担う基幹ハードとして売り込み、4月には5%超の成長を指引いた。83日後に届いた実績は1%増。大型案件が立ち消える中、経営陣が何を知っていたのかをハーゲンズ・バーマンが問うている。

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Vincent JiangVincent Jiang · 3 min read
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SXSW 2025のステージで講演するIBMのアービンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)。色鮮やかなプロジェクションを背景に、座ったまま両手でジェスチャーを交えて話す様子。
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SXSW 2025に登壇したIBMのアービンド・クリシュナCEO。氏が7月に株主に送った書簡で、IBMの時価総額を1日で680億ドル減らしたメインフレームの落ち込みが明らかになった。

10週間後、弁護士が動く

ハーゲンズ・バーマン(Hagens Berman)は2026年9月23日、IBMが米証券法に違反した可能性を調査していると発表した。焦点は、4~7月に同社がメインフレーム「IBM Z」事業についてどんな説明をしていたかだ1。株価は9月24日にさらに2.4%下げて約227ドルとなり、時価総額は2139億ドルに縮んだ2。この調査は結局のところ、パートナーのリード・キャスリーン氏の問い一点に集約される。IBMが「大型案件が期日どおりに成約しない公算を高める情報」を得ていた可能性があるのか、そしてそれはいつなのか1。

急落の83日前、「記録的なスタート」

IBMは4月22日、第1四半期のインフラ部門売上高が15%増、「ハイブリッド・インフラ」が28%増、メインフレーム「IBM Z」が51%増と発表した。2026年通期の為替変動を除いた成長率は5%超と指引き、第2四半期も「通期と同様」との見通しを示した1。かつてない規模のリアルタイムAI処理を担う企業基幹級ハードとして売り出された「z17」は、「記録的なスタート」を切っていた1。

売り込みは止まらなかった。IBMは7月7日、オンプレミスでのAI推論向けの小型・ラックマウント型z17を投入した3。7日後に届いたのがクリシュナCEOの書簡だ。売上高は1%増、インフラ部門は7%減、「多数の大型案件が成約に至らなかった」4。株価は25%超下げ、時価総額で680億ドル超が一昼間で消える上場以来最悪の1日となった15。

AIブームがメインフレームの設備投資を食う

書簡は仕組みを明かしている。6月下旬、顧客は「予想される価格上昇に先んじて供給がひっ迫するインフラを確保するため、四半期の設備投資をサーバー、ストレージ、メモリーの購入に振り向けた」4。クリシュナCEOは、今後の値上げ幅を15~30%と示した。デル、HP、アップルの3社もすでに、AI投資ブームでメモリー費用がかさみ、値上げを迫られていると警告していた6。向き先を変えた6月の予算が指し示すのは、刈り取る側だ。AI投資ブームを支えるサーバーとメモリーの供給企業であり、デルやHPもその一員に名を連ねる46。

銀行がメモリーの買いだめに充てた1ドルは、6月にメインフレームを買わなかった1ドルでもある。IBM Zの売上高は42%減、ハイブリッド・インフラは10%減、トランザクション処理(Transaction Processing)は8%減。メインフレームのハードウェア1ドルにつき3ドルをIBMにもたらすソフトウェアの売上高も、道連れに沈んだ67。

IBM Z、1四半期で+51%から42%減へ急転落

  • 2026年第1四半期
  • 2026年第2四半期
-60%-40%-20%0%20%40%60%IBM Z-42.0%51.0%ハイブリッド・インフラ-10.0%28.0%インフラ部門-7.0%15.0%売上高全体1.1%9.5%-88%
Data
2026年第1四半期2026年第2四半期Change
IBM Z51.0%-42.0%—
ハイブリッド・インフラ28.0%-10.0%—
インフラ部門15.0%-7.0%—
売上高全体9.5%1.1%-88.4%
売上高の前年比成長率(2026年第1四半期と第2四半期の比較)。セグメント別の成長率はIBMの発表値で、第1四半期は4月22日のリリース、第2四半期は7月14日の事前発表と7月22日の正式決算による。丸め方は報告どおり。売上高全体の成長率は、IBMがSECに提出した四半期売上高から算出した。1,6,7,8

先送りか、消滅か

クリシュナCEOの弁明は数字でできている。延期した案件は「十数件」で、うち約3分の1は四半期末から3週間で成約に至った。z17はz16のほぼ130%のペースで推移しており、「先送りであって消滅ではない」5。それでもIBMは2026年の為替変動を除いた成長率の見通しを、5%超から4~5%に引き下げた7。株価は7月22日の決算発表以降、13.1%上昇しているが、モルガン・スタンレーは目標株価を293ドルから190ドルに引き下げ、キーコープ(KeyCorp)は急落前の6月23日に投資判断を引き下げていた27。

IBMの成長、2025年を通じ加速し26年第2四半期に1.1%へ急落

0%5%10%15%23年10~12月期24年4~6月期24年10~12月期25年4~6月期25年10~12月期26年4~6月期1.1%
Data
売上高成長率
23年7~9月期4.6%
23年10~12月期4.1%
24年1~3月期1.5%
24年4~6月期1.9%
24年7~9月期1.5%
24年10~12月期1%
25年1~3月期0.5%
25年4~6月期7.7%
25年7~9月期9.1%
25年10~12月期12.1%
26年1~3月期9.5%
26年4~6月期1.1%
四半期別のIBM総売上高の前年同期比成長率。米証券取引委員会(SEC)に提出した四半期売上高から算出した。2026年第2四半期の1.1%こそ、4月の「5%超」の指引きの後に起きた急落である。8

答えは次のZ決算に出る

延期した案件が実際に成約するのか。その答えが表れるのは2026年第3四半期(7~9月)のZの決算数字だ。この数字は「先送り」説の真偽を試すとともに、調査が正式な集団訴訟の提訴にまで至るかどうかを左右する材料にもなる。ハーゲンズ・バーマンはすでに、SECの回収額の最大30%に相当する内部通報者報酬を告知している1。売り込みはそれでも続く。9月22日、IBMはマリスト大学にz17を設置し、「膨大なAI計算能力」を提供すると発表した9。IBMはz17を、カネの動く現場でAIを走らせるために作った。6月、カネが流れたのはAIの方だった。

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